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いね(Rice)

【病害】稲に発生する病害の種類は多いが、そのうち経済的にみて防除を要する病害は20種ほどである。育苗中のおもな病害は、苗立枯病、いもち病、ばか苗病、ごま葉枯病、白絹病などがある。
本田でもっとも被害の大きい病害はいもち病であり、これに次ぐ病害としては紋枯病、白葉枯病、ごま葉枯病、小粒菌核病などがあり、地域的には萎縮病、縞葉枯病、黄萎病、黄化萎縮病、籾枯萎縮病、葉鞘褐変病などが発生する。いもち病は予防散布が基本であり、耐性菌に留意した防除設計が大切である。萎縮病などウィルス病は、ウンカ、ツマグロヨコバイなど媒介昆虫の防除をせねばならない。

作物 病害虫 病害虫名 学名 英名
  発生と生態
いね 病害 小粒菌核病   Stem rot
 水際の葉鞘、茎に黒色の斑点又は条を形成し出穂後倒状しやすくなる。一般に、タオレ、クセ、クキコケ、カラクダなどと呼ばれており、収穫間近に打わら状になって倒状することが多い。小球菌核病と小黒菌核病の病徴はほとんど区別ができず、防除法も同じである。本病の発生適温は30℃前後で湿田に多い。
   ○小球菌核病 Leptosphaeria salvinii  
   ○小黒菌核病 Helminthosporium sigmoideum var.irregulare  
いね 病害 ごま葉枯病 Cochliobolus miyabeanus Helminthosporium leaf spot, Brown spot, Helminthosporium blight
photo 発病適温25℃〜28℃ぐらい。被害もみを育苗箱にまくと不完全葉や本葉に条斑を生じ、葉がねじれ伸長が止り苗焼症となる。葉では楕円形、暗褐色の斑点、輪紋ができ、穂では穂首、枝梗、籾が暗褐色になるが、白穂にはならない。7月下旬〜8月上旬が高温多照であると発病しやすく、厚まき不均一な種まきなども原因になりやすく、秋落田に発生しやすい。近年、本病菌などに起因する枝梗いもち病類似の症状(穂枯れ症状)が問題になっている。
いね 病害 穂枯れ症    
   ○ごま葉枯病 Choliobolus miyabeanus  
 みご:黒褐色の細く短い条斑 もみ:暗褐色斑点〜全面褐変、灰白色崩壊部
   ○褐色葉枯病 Micronectriella nivalis  
 みご:淡紫褐色の周縁不明瞭なやや細長い汚斑 もみ:同縁不明瞭な褐色斑点〜全面褐変
   ○条葉枯病 Sphaerulina oryzina  
 みご:紫褐色両端のかすれたやや広く長い条斑 もみ:抱合部にそって紫褐変〜紫褐色病斑
   ○小球菌核病 Leptosphaeria salvinii  
 (小粒菌核)みご:黒褐色の長紡錘形〜線状病斑。内壁に多数の小さい黒色菌核。 もみ:褐点
   ○小黒菌核病 Helminthosporium sigmoideum var.irregulare  
いね 病害 いもち病 Pyricularia oryzae Blast
photo 稲の全成育期間に現れて稲体の各部を侵し、その侵す部分によって葉いもち、首いもち、節いもちなどと呼ばれる。病斑は葉では周縁褐色、中央灰褐色の紡錘形、穂は穂首や枝梗が黒褐色になり白穂が多い。節では黒くなり折れやすくなる。葉いもち病斑には白点、褐点、慢性型、急性形の4yすがあり、急性形は円〜楕円形で周縁紫褐色、中央灰色である。発生型は関東以北と以西に大別でき、前者は葉いもちの発生がおそく比較的少ないが、穂いもちが多発し、後者は逆に葉いもちが多い。25〜28℃で温度が高いときに繁殖しやすく、25℃ぐらいで日照不足のとき多発する。
いね 病害 紋枯病 Rhizoctonia solani Sheath blight
 菌核で越年し、潅水などにより浮かび上がり、田植後水際から発芽侵入する。初期は暗緑色の小さい不規則な斑点で、次第に大型で雲形の中央灰白色病斑となる。穂が節間伸長を始めると次第に上位葉鞘や葉に進展する。発病が多いと止葉葉鞘や止葉に発生し被害も大きくなる。最近、褐色紋枯病などによる紋枯病類似症が問題になっている。
いね 病害 紋枯病類似症    
 本田では主に灰色菌核病を除く三種が発生するが、病斑による区別はむつかしい。一般に紋枯病よりも発生時期が遅れ、出穂期以降に進展する。
   ○褐色紋枯病 Rhizoctonia solani(III-B)  
 長くてやや不整形の病斑が多く、紋枯病よりも褐色部分の幅が広く黒味をおびる。
   ○赤色菌核病 Rhizoctonia oryzae  
 病斑は大形楕円形で、褐色紋枯病と似ており区別し難い。
   ○褐色菌核病 Sclerotium oryzae-sativae  
 褐色、楕円形の小形病斑を多数形成する。収穫期に発生が多い。
   ○灰色菌核病 Sclerotium fumigatum  
いね 病害 苗立枯病 Fusarium solani, F.roseum f.sp.cerealis, Rhizopus sp.(Pythium sp., Rhizoctonia sp., Mucor sp., Corticium sp., Torichoderma sp. Seeding blight
photo 発芽直後から移植間際まで発生する。症状には多少異なったものがあり、全体が一様に枯れるもの、枯れた苗に白い粉のようなものがでるものなどがある。引き抜くと容易に抜け、根はくさっている。
いね 病害 ばか苗病 Gibberella fujikuroi Bakanae゛disease
photo 育苗中播種後数日から発病を認め、はなはだしい場合は発芽後間もなく枯死するが、普通被害苗は淡黄緑色で細長く徒長する。本田では分けつ少なく、徒長して、しばしば節からひげ根を生じ、多くは穂ばらみ期から出穂直前に枯死する。
いね 病害 黄化萎縮病 Phytophthora macrospora Downy mildew
 苗代および本田初期に浸冠水した場合に発生しやすく、浸水の2〜3週間後には病徴が現れる。罹病苗は草丈短く、葉は黄化してやや幅広で短く、縦に黄白色の小斑点を連鎖状に生ずる。苗代から本田初期に18〜20℃位の温度がつづき、雨が降れば発病しやすい。
いね 病害 白葉枯病 Xanthomonas campestris pv.oryzae Bacterial leaf blight
photo 葉の辺が汚白色になり、葉に出る朝露が濁り乾くとその部分に黄色の粒が形成される。苗代が高温で時々浸水した場合あるいは本田で冠水したり、強風の後などに発病しやすい。高温多雨の年、肥沃土壌に発生が多い。
いね 病害 もみ枯細菌病 Pseudomonas glumae Bacterial grain rot
photo 罹病籾や藁が翌年の伝染元となり、種子浸漬中や育苗箱内で水中に遊出し、感染発病する。病籾から発芽した幼苗は苗腐敗を起こしたり、出穂1週間後の乳熟期頃から籾に発生するが枝梗は健全である。病籾ははじめ、赤褐色であるがやがて水分を失って萎凋し、灰白色から淡黄褐色となる。また、基部が黒褐色に変色することもある。病籾は多くの場合、不稔となり、また稔実しても不完全米となる。
いね 病害 葉しょう褐変病 Pseudomonas fuscovaginae Sheath brown rot
 止葉抽出期から出穂期にかけて、主として止葉の葉しょうに退緑色の斑紋を生じ、後に濃い褐色の斑紋となる。病状の軽いときは葉しょうの褐変で止るが、激しい場合には穂全体にも発病し、もみに病斑を形成し、不稔、不完全粒や茶米を生ずる。
いね 病害 グラッシー・スタント病 virus Rice grassy stunt
 病徴は萎縮病に似るが、黄化葉に緑色部分が残り、小褐点を生じることが多い。若い時期に感染すると出穂しない。病原ウィルスはトビイロウンカにより媒介される。
いね 病害 萎縮病 Rice dwarf vivus Dwarf, Stunt
 ツマグロヨコバイ、イナズマヨコバイによりで伝播されるウィルス病である。葉は濃緑色、短小で葉脈にそって小白点を生ずる。株は分けつ過多で短く、出穂してもシイナになる。九州地方に多い。田肥料田にも多発する。
いね 病害 黄萎病 Mycoplasmalike organisms Yellow dwarf
 ヨコバイ類により伝播されるマイコプラズマ様微生物による病気である。葉は黄色となり成育不良で矮化、重症苗は出穂前に枯死または不稔穂を出す。刈株から再生するヒコバエは黄色を呈する。九州、四国、関東に発生多い。
いね 病害 縞葉枯病(ゆうれい病) Rice stripe virus Stripe
 ヒメトビウンカにより伝播されるウィルス病である。草丈短く若葉は巻いて湾曲下垂し、葉は黄白色縞状の病斑を生じ、白穂となる。一般に苗代及び田植後8週間以内に加害を受けた稲に発病が多い。
いね 病害 黒すじ萎縮病 Rice black-streaked dwarf virus Blacked-streaked dwarf
 ヒメトビウンカにより伝播されるウィルス病である。病状は萎縮病に似ているが、白い斑点はでず、葉裏や葉鞘に黒い条が現れる。苗代期に感染すると分けつは少なく、本田初期に感染すると分けつは多くなる。

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